国民党台南支部の敷地内で行われる慰安婦像除幕式の様子
(台南 16日 中央社)南部・台南市に台湾で初めての慰安婦像が設置されたことについて、同市や与党・民進党台南支部は「国民党による慰安婦の政治利用」だとの見方を示している。日本の対台湾窓口機関、日本台湾交流協会は15日、国民党台南市党部関係者らによる慰安婦像設置は日本政府の立場やこれまでの取り組みと相容れないものであり、「大変残念」とする声明を発表した。
台南市政府新聞及国際関係処の許淑芬処長は15日、慰安婦像除幕式は国民党が一手に取り仕切ったものだと指摘。式典の開催地や像の設置場所が同党の所有地であるほか、式典を主催した台南市慰安婦人権平等促進協会が今年4月に同党台南支部の謝龍介主任委員の協力で創設され、馬英九前総統が式典をつかさどったことを根拠に挙げた。式典後、台南市長選に出馬する同党公認候補、高思博氏の街頭イベントが行われたことにも触れ、同党には政治的目論見があったと批判した。
民進党台南支部の蔡麗青執行長は、馬前総統が総統在任中に像を設置しなかったのは、外交上の考えがあったからだと言及。選挙期間中に協会設立や銅像設置などの大きな動きを突然見せたのは、1947年の2・28事件で犠牲になった弁護士の湯徳章(坂井徳章)氏の像への当てつけで、国民党は難癖をつけていると非難した。湯氏の像は市内の湯徳章記念公園に設置されている。また、慰安婦問題は党派を問わず共に向き合うべきで、これらの強くて偉大な女性たちが消費されることはあってはならないと述べた。
交流協会は15日、公式サイトに声明文を掲載。慰安婦像設置を残念に思う気持ちを示した上で、日本政府主導で創設された「アジア女性基金」が台湾で呼びかけに応じた元慰安婦13人に「償い金」として1人当たり200万円、医療・福祉支援事業として1人当たり300万円を支給したことを説明。歴代首相からのお詫びの手紙を元慰安婦に届けたことも紹介した。
慰安婦像は、日本統治時代建設の観光名所「林百貨」の向かいに設置された。一帯には日本人観光客も多く訪れる。