台湾の歴史教科書
(台北 17日 中央社)来年度から実施予定の小中高の社会科の学習指導要領づくりが教育部(教育省)によって進められている。今月13日の会議では、高校の歴史科について、歴史上の出来事を年代別にまとめる指導方針から、テーマ別のアプローチに変更する方針が固まった。これまで独立していた中国史は東アジア史と関連させて扱われることになる。これに対し、野党・国民党は、政府は中国史を削減し、中国的要素を排除しようとしていると反発を示した。
同部は今回の改訂について、これまでの、一つの地域に焦点を当てた歴史学習から脱却し、「中国と東南アジア」「台湾と世界」など地域間の交流を重視する方針に転換する立場を示している。生徒が国際的な視野で歴史を捉えられるようにするのが狙い。同部は今月末までの審議完了を目指す。
国民党立法院党団(議員団)は14日、記者会見を開催。曽銘宗書記長は、政府の政治的な目的は明らかであり、新しい指導要領案は両岸関係の安定した発展の助けにならないとして抗議の意を示した。
また、13日の会議では、過去の政権下で行われた人権侵害などの真相究明を目指す「移行期の正義」に関する内容を加えるか否かについての議論もなされた。曽氏は会見で、中学の新指導要領案では、国民党政権が市民を弾圧した1947年の「2・28事件」などに触れている一方、日本統治時代の台湾原住民(先住民)による抗日蜂起や慰安婦に関する内容が軽視されていると訴えた。
台湾大学歴史学科卒の与党・民進党の立法委員(国会議員)、鍾佳浜氏は、国民党は歴史観とイデオロギーを歴史教育に持ち込んでいると批判。歴史教育はさまざまな方法で行うことができるとし、今回の指導要領案で採用されたアプローチは、あくまで指導方法の一つにすぎないと指摘した。
中国史を東アジア史の一部として扱うことについては中国側も反発を示している。中国の対台湾政策を担当する国務院台湾事務弁公室の馬暁光報道官は15日、今回の指導要領の改訂は台湾独立派による両岸の分裂を狙った行為だと非難し、「両岸は同じく一つの中国に属する」との立場を改めて表明した。