芹沢鴨の最後の宴会の場となった「松の間」(京都市下京区・角屋)
夏の京都で文化財を特別公開するキャンペーン「京の夏の旅」が、京都市内8カ所で行われている。43回目の今夏は「明治150年」「京のお屋敷」「京のもう一つの花街・島原」がテーマ。幕末維新の志士ゆかりの地を訪ねる定期観光バス特別コースで巡った。
特別公開は市と市観光協会が夏の観光客誘致のために毎年実施している。テーマに合わせた定期観光バス(有料)の特別コースも期間中運行する。
所要時間約6時間の観光バスはJR京都駅前を午前10時20分に出発。霊山歴史館(東山区)では「大西郷展」が開催中で、西郷隆盛の詩書や肖像画などの関連史料を見ることができる。その後、伏見区に移動し、鳥羽伏見の戦いで薩摩藩が部隊を置いた御香宮神社を訪問。昼食は、銃撃された新選組局長近藤勇の遭難の碑が店前に建つ料亭「清和荘」で和食を楽しめる。
午後からは下京区に移動して非公開文化財の見学へ。花街の歴史を伝える島原で現存唯一の揚屋建築の角屋(重要文化財)を見る。多くの幕末の志士が利用した角屋では、西郷が行水に使ったたらいを展示する。新選組の芹沢鴨が最後に宴を催した松の間にも入室でき、角屋に残る古文書も見ることができる。角屋もてなしの文化美術館の中川清生館長は「島原もかつて華やかな花街だった歴史を理解してほしい」と話していた。
現在も営業している置屋の輪違屋では、ふすまに太夫道中傘を貼り込んだ「傘の間」や近藤勇の筆による屏風(びょうぶ)が残り、幕末の雰囲気と花街文化を邸内で感じられる。
このほかにも定期観光バス特別コースは、夜の嵐山、朝の禅寺、半日で京都の旧邸を巡るコースなどもある。
■「京の夏の旅」で角屋(1階のみ公開、9月14日まで)と輪違屋以外の文化財特別公開は以下の通り。原則9月30日までだが、場所によって期間や休館日、開館時間が異なる。有料。市観光協会075(213)1717。
・長楽館「御成の間」(東山区八坂鳥居前東入ル)
実業家村井吉兵衛が1909年に欧州の建築様式で建築。最上階の「御成の間」は、シャンデリアや金ぱくのふすま絵など和と洋が融合した空間になっている。8月28日、9月2、5、8、10、11、15、16、19、22、28日および29日(午前10時~午後2時)は見学休止。
・大雲院祇園閣(東山区祇園町南側)
大倉財閥の大倉喜八郎の別邸の一部だった祇園閣は建築家伊東忠太による昭和初期の名建築。祇園祭の鉾がモチーフ。高さ36メートルで閣上から眺望を楽しめる。9月26日休み。
・旧三井家下鴨別邸(左京区下鴨)
豪商旧三井家の別邸で重要文化財。1925年に木屋町から移築され、玄関棟などを増築して完成。池を擁する庭園と一体となった開放的な主屋で、特別公開では2階の座敷から眺めを楽しめる。特別公開は8月28日まで(22日休館)。
・上賀茂神社本殿・権殿(北区上賀茂)
賀茂別雷神をまつる本殿と常設の仮殿である権殿は国宝。神職の案内で特別参拝でき、貴重な神宝も特別公開する。
・下鴨神社本殿・大炊殿(左京区下鴨)
国宝の本殿を特別参拝所から間近で拝観でき、神社建築としては珍しい大炊殿(重要文化財)も公開する。9月1日午前10時~11時は本殿拝観不可。
・旧邸御室(右京区御室)
双ケ丘の北側に昭和初期に建てられた和風邸宅。国登録有形文化財。富士山をかたどった欄間など内部に意匠が凝らされ、美しい日本庭園も広がる。
(京都新聞)