京都市は中京区の先斗町通で、電線や通信回線を地中に埋める無電柱化事業を5日に始める。狭い道でも適用できる新工法を全国に先駆けて導入することで可能になった。市は「新工法は従来より事業費を抑えられる利点もある。無電柱化拡大に向けた突破口になれば」と期待している。
■狭い道の新工法導入で可能に
無電柱化は景観向上のほか、災害時に電柱が倒れて救助活動の妨げになるのを防げるが、日本は諸外国に比べて整備が遅れ、最も進む東京都でも一般道の5%弱。事業費は1キロあたり7億~9億円かかるとされ、京都市内の道路も2%にとどまる。一方、昨年末に電力会社などに電柱の新設抑制などを促す無電柱化推進法が成立した。2020年の東京五輪開催に向けて整備に力を入れる東京都では条例化を検討している。
先斗町通の工事対象区間は490メートルで、幅が1・6~4・4メートルと狭い。地中には上下水道管やガス管が通っており、電線や通信回線を埋めるのは技術的に困難だった。電線類を埋める深さは、従来、地下40~80センチとされていた。国が昨年、無電柱化の促進でネックとなっていたコストを下げるため基準を緩和。先斗町通でも既存の管と重ならない路面直下に設置できるようになった。
また先斗町通で無電柱化に取り組むと、変圧器の入る地上機器(幅120センチ、高さ90センチ、奥行き50センチ)を30基置く必要があるが、公園などの市有地だけではまかなえず、お茶屋や飲食店などの協力で民有地に12基を設置する。通りの風情を損なわないよう、店頭の展示ケースを改修して下部に機器を据えたり、店内に取り込んだりと工夫する。
先斗町通の場合、お茶屋や飲食店の営業に影響が出ないよう夜間に工事するなど、工費がかさむ特殊事情はあるが、市道路環境整備課は「京都には狭い道が多く、新工法の可能性は大きい。各事業のコストが抑えられれば、その分、無電柱化の着手地域も広げられる」とする。
事業完了は2019年度末の予定。5日は市関係者や地権者、先斗町まちづくり協議会のメンバー、事業者ら約150人で起工式典を開く。