観光客らで混雑する京都市バス
観光客増加に伴う京都市バスの車内混雑を解消するため、市交通局は2017年度から対策に乗り出す。利用が急増している市バスの「1日乗車券カード」を値上げする一方、地下鉄も乗れる「京都観光1日乗車券」は値下げして価格差を縮め、地下鉄への誘導を図る。また市バスは「後乗り前降り」を長年続けるが、「前乗り後降り」で混雑を緩和できるか確かめる実証実験にも着手する。
15年度の1日平均乗客数は市バスが35万3千人、地下鉄が37万2千人で近年順調に増えているが、観光客の利用は市バスに偏っている。これが端的に表れているのが、市バスと京都バスの均一運賃区間(大人230円)で乗り放題となる1日乗車券カードの発売枚数だ。
00年度の100万枚から11年度は372万枚、15年度は614万枚へと急増している。00年度に大人700円から500円に値下げし、均一区間を嵯峨・嵐山地域など観光地を含む郊外にも拡大したことで、利用を押し上げた。
一方、市バス・地下鉄全線と京都バスで使える京都観光1日乗車券(大人1200円)などの発売枚数は横ばいで、15年度が49万枚。市交通局は「地下鉄とバスを乗り継げば早く行ける観光地も、バスだけで行ける場合が多く、バスに客が流れる」と分析。新年度中の価格変更を目指す。
また、車内の混雑は乗降方式が一因とみられる。市バスは均一区間以外に、乗車距離に応じた運賃設定の調整区間があり、降車時に運賃を払う「後乗り前降り」方式を半世紀近く採用する。しかし地理に不案内な観光客らが降車口に近い前方に集まりがちで、後方の客がスムーズに降りにくくなっている。
実証実験は、前方からの乗車時に運賃を支払う「前乗り後降り」を一部路線で試みる。車体中央部にある降車口に向けて車内の前方と後方のどちらからでも降りやすい動線にして、効果を確かめる。実際の導入にはバス停の点字ブロックや屋根の移動などの費用がかかるため、有識者の意見や東京都などの先行事例も踏まえて検討する。
17年度当初予算案に両事業費で計1億6200万円を盛り込んだ。市交通局は「市バスは経営健全化団体だった時期もあり、混雑解消を議論できるのは大きな変化。快適な移動に力を入れたい」としている。