琴を使って玉堂が復元した催馬楽を演奏する武内准教授(中央)
江戸後期の文人画家・浦上玉堂(ぎょくどう)(1745~1820)が復元した平安期の雅楽の一種・「催馬楽(さいばら)」を、京都市立芸術大の日本伝統音楽研究センターが再復元し、5日、京都市中京区のウイングス京都で演奏した。現存する催馬楽は中世に衰退後、江戸期に公家によって復元されたものだが、独自に復興を試みた玉堂の譜に光を当てた。
催馬楽は、各地の民謡を唐楽や高麗楽など渡来の音楽の様式を用いて編曲した宮廷歌謡。15世紀後半の応仁の乱後に断絶したため、現在の伝承は、公家が中心となって江戸時代に再興されたものという。
玉堂は京都の儒者や仏者と縁があり、脱藩後に晩年を京都で過ごした。中国の伝統楽器である「琴(きん)」を好み、寛政元(1789)年に京都で、催馬楽を琴曲で復元した「玉堂琴譜」を出版した。
同センターの武内恵美子准教授によると、復元する元となった楽譜は口伝を前提とし、音階や節回しなどが分からないため、復元には「さまざまな解釈が入る余地があり、復元者によって異なる可能性が高い」と報告した。公家が再興したものと、玉堂のものでは、リズム解釈が異なるため、「全く異なる音楽として再興された」という。
この日は、初めに現存する催馬楽の流れをくむ江戸時代のものを東京の雅楽グループが笙(しょう)や笛、琵琶を使って演奏した。続いて、武内准教授が中国楽器の琴(きん)を用いて、玉堂の琴譜を再現して奏でた。参加者たちは耳を澄ませ、拍子の違いなどを楽しんだ。