無農薬野菜の通販サイト「びわ湖が恋する野菜たち」を開設した山内さん
「出来の良いものを選んで、一粒ずつ手で収穫しています」「育てるだけじゃなく収穫も大変ですね」。野洲市の農家辻久美子さん(50)が自身が経営するブルーベリー園で、近江八幡市の主婦(50)と会話を弾ませた。
2人を結びつけたのは、県産無農薬野菜を販売する通販サイト「びわ湖が恋する野菜たち」。旬の野菜や果物8~10種類の詰め合わせを1回4320円で、週1回~3カ月に1回の4コースで定期販売する。
「環境に配慮した栽培に取り組む農家を応援したい」と守山市の山内健さん(59)が5月に開設した。命名の理由は「環境負荷が少なく、琵琶湖が恋をしてしまうような野菜を販売したい」という思いからだ。
山内さんは会社員だった10年前、県主催の琵琶湖保全に関するワークショップに参加。琵琶湖を通じて農林漁業者が一体となり、環境活動に取り組んでいる姿に「これこそが滋賀の魅力と確信した」。昨年2月に退社後、県内を巡って出会った無農薬にこだわる3軒の農家と提携し、サイトを立ち上げた。
無農薬栽培は農家にとって苦労が絶えない。毎日の世話が欠かせず、作付けしても病気や害虫の影響で全滅することもある。それでも辻さんは「農薬をまけば水質汚染につながる。琵琶湖に近い農場だからこそ湖のために、食べる人のために低価格以外の価値を提供したい一心」と熱意を込める。だからこそ、消費者との出会いは「一番のモチベーションになる」と喜ぶ。
辻さんの農場を訪れた主婦は「自分の与えたもので子どもが成長すると考えたら無農薬のものを買いたい」と話す。ただ、「まだまだ無農薬を基準に野菜を買う人は少ない」と山内さん。自身もかつては安さだけで野菜を選んでいたが、生産者の思いに触れて変わった。だから通販にもかかわらず、農業の現場に出かける機会を作るため、農家で受け取ると1500円分の食事券がもらえるという特典を付けた。
「作り手の思いや苦労に触れることが、滋賀の1次産業や無農薬野菜の魅力について知る第一歩。休日に農家を訪れ、野菜を受け取る。そんな使い方をしてもらえれば」と山内さんは願う。
【京都新聞】