注連縄切りの大役を果たす稚児の林賢人

17日行われた祇園祭前祭(さきまつり)の山鉾巡行で、先頭を行く長刀鉾(京都市下京区四条通烏丸東入ル)の稚児、林賢人君(10)=御所南小4年=は「注連縄(しめなわ)切りの儀」に臨み、見事な太刀さばきで、巡行の始まりを告げる大役を果たした。
午前8時45分、四条烏丸交差点で、補佐役の禿(かむろ)の桐原真優君(10)=同=、小嶋啓太君(9)=同=に続いて林君が鉾に乗り込んだ。稚児は「神の使い」とされるため地面に足を付けず、「強力(ごうりき)」に担がれてはしごを登った。「(前夜は)緊張してあまり眠れなかった」という。
注連縄の張られた四条麸屋町交差点に差し掛かると、長刀鉾保存会の稚児係に支えられ、習った通りの所作をした。太刀を抜き、切っ先を見て、振りかぶった。刀が台に当たる音がして、注連縄が二つに切れると、シャッターが一斉に押され、拍手がわき起こった。「歓声が聞こえて、やったーと思った」。
林君を後ろから支えた稚児係の井尻浩行さん(48)は「堂々としていたのでやりやすかった。神様が降りてきたように息が合い、一つになれた感じがした」と興奮気味に話した。
巡行を終え、御池新町で鉾を降りた林君たちは八坂神社(東山区)で「お位返しの儀」に臨んだ。神前で無事巡行が済んだことを報告し、稚児の役目を終えた。「普通の人に戻ってほっとした」と林君。神社の南楼門を出た瞬間、父誠一郎さん(45)にしがみついて甘え、「神の使い」の表情は消えていた。