地蔵盆で数珠回しをする京都市下京区の町内(前田講師提供)
伝統行事の地蔵盆の維持に苦慮する京都市内の町内会が増えている。市中心部でホテルやマンションの建設が相次ぐ中、地蔵の保管場所が問題となったり、若い世代が参加しないケースが目立つといい、京都の夏の風物詩が岐路に立たされている。
地蔵盆は8月中旬から下旬に、主に近畿地方で、町内と子どもの安全を願って営まれる。市が5年前に行ったアンケートで、約8割の町内会・自治会が実施していると回答するなど、京都では特に色濃く残る。
地蔵は道路沿いの石像や、住民が自宅で保管する掛け軸などさまざま。観光客向けに市民が案内する地蔵盆の見学ツアーは、申し込み開始から数時間で予約が埋まるほどの人気ぶりだ。
だが、運営に悩む町内会は少なくない。ホテルやマンション建設で地蔵が撤去を迫られたり、飾りなどの道具や地蔵の管理が会員の高齢化で難しくなっているためだ。オフィスビルが建って住民が減り、地蔵盆をやめた町内もある。
地蔵盆を知らない新住民や、準備や運営に積極的でない若い世帯も増えており、町内会に加入しなければ参加させるべきでないという旧住民らの声もある。
こうした状況の中、地蔵盆の今後のあり方を考えようと7月、中京区竹間学区の各町内の住民が集まり、他学区の事例を学ぶ会合を開いた。地蔵盆を調査する京都大の前田昌弘講師(建築学)を招き、ユニークな取り組みの写真を見たり、意見を交換したりした。
参加した竹間自治連合会の山科文子会長は、「現代的な遊びを取り入れるなど、若い世代にも受け入れられる努力が必要だと思った」と話す。
他区の町内からも相談を受けているという前田講師は、「共働き家庭が増えるなどライフスタイルが変化し、地蔵盆の意義や運営を見直す時期が来ているのではないか。存続させるためには、参加していない住民が地蔵盆に触れる環境を整えることが大切」と指摘する。