世界遺産・二条城(京都市中京区)の入城者数が、今年に入り急増している。22日現在で前年同期に比べ約1・5倍という盛況ぶりだ。今年は、江戸幕府の15代将軍徳川慶喜が朝廷に政権を返上した「大政奉還」から150年の節目に当たり、市は「日本の歴史が大きく変わる舞台となった二条城にあらためて注目が集まっている」と分析している。
国宝の二の丸御殿では30日まで、徳川家の将軍が大名らと謁見(えっけん)した大広間前などの障子を特別に開放している。普段は障壁画などを保護するため閉じており、一般公開は初の試み。国の特別名勝となっている二の丸庭園などを望め、連日、大勢の観光客でにぎわっている。
「大広間は慶喜が大政奉還を表明した場所。将軍が眺めた景色を楽しめる、と評判は良い」と、市元離宮二条城事務所。長崎県長与町から夫婦で訪れた会社員森省治さん(55)は「この場所で大政奉還が現実に行われたと思うと、感慨がある」と話す。妻の美紀さん(54)は「慶喜はどんな気持ちだったのか」と思いをはせた。
二条城の入場者数は、今年1月5~22日だけで5万5440人(前年同期比1万8429人、49・8%増)と、早くも5万人を突破。ここ数年は3万5千人前後で推移していただけに、「大政奉還効果」がさっそく表れた形だ。
世界遺産である二条城には外国人の観光客も多く訪れるが、今年は特に日本人の関心が高まっているようだ。
城内を案内する音声ガイドで日本語が流れる機器の貸し出し数は前年の2倍以上に跳ね上がっている。また、22日に中京区の立命館大朱雀キャンパスで開催された大政奉還の記念シンポジウムには、定員400人に対し1200人を超える応募があった。
機運をさらに盛り上げようと、今年は関連イベントも相次いで実施される。22日からは、ゆかりの深い京都市や福島県会津若松市、鹿児島市など21市区が「幕末維新スタンプラリー」を始めた。
市元離宮二条城事務所は「大政奉還は日本の大転換点であり、教科書でも取り上げられていて、日本人なら皆、知っている。二条城で歴史を体感してもらいたい」としている。