(台北 14日 中央社)高速道路上で乗客乗員44人が乗った観光バスが横転した事故で、14日午前、台北市内の病院に搬送され、治療を受けていた男性が死亡した。死者は33人になり、負傷者は11人となった。観光バス関連の事故としては過去30年で最悪の惨事となっている。
▽生存者「身構える余裕なかった」
現場は国道3号と国道5号の両高速道路が接続する南港ジャンクション。事故を起こしたバスは、蝶恋花旅行社(台北市)が主催した日帰りの桜鑑賞ツアーに参加し、台中市内から台北に戻る途中だった。
バスの後続車に搭載されたドライブレコーダーの映像には、バスがほとんど減速しないまま左カーブに突入し、車体右側をコンクリート壁にぶつけた後、道路脇に転落する様子が映っていた。交通部(交通省)台湾区国道高速公路局によると、現場周辺の制限速度は時速40キロになっているという。
生存者が家族に語った証言によると、事故直前の車内は静かで、突然横転し、身構える余裕はなかったという。バスの天井ははがれ、周辺には外れた座席や部品が散乱していた。
▽業界団体「ツアー内容に問題なし」
蝶恋花旅行社は1999年創業。日帰りや1泊2日の国内旅行を専門に扱っていた。事故後に関係者らが開いた記者会見で、旅行代理店の業界団体、中華民国旅行公会全聯会の広報担当者は、事故を起こしたツアーは午前9時に台北を出発し、途中運転手は3時間の休憩を取ったと説明。ツアー内容や費用について、問題はないとする認識を示した。同社の関係者は「申し訳ありませんでした」とだけ謝罪し、会場を後にした。
▽相次ぐ観光バス事故
台湾では観光バスの事故が相次いでいる。2006年には小学校のPTA関係者45人を乗せたバスが台南市で横転し22人が死亡、24人が重軽傷を負った。07年には台北市陽明山でブレーキが効かなくなったバスが乗用車に接触後、道路脇の崖下に転落。8人が死亡25人が負傷した。
10年には宜蘭県で中国大陸からのツアー客を含む乗客乗員26人が乗ったバスが、大雨による土砂崩れに巻き込まれ海に転落し、全員が死亡または行方不明に。12年には22人乗りバスが新竹県の山間部で道路脇の崖下に転落。死者13人、負傷者10人を出す惨事となった。
昨年7月には高速道路上で中国大陸からの観光客を乗せたバスが走行中に炎上。乗客乗員26人全員が死亡した。